負けた。

 僕は一歩引いて二人を見ていた。


「小野田先輩!私、小野田先輩が好きです!」

 もう見ていられなかった。

 それでも、久しぶりに見た西口らしい西口。

 それがうれしくてたまらなかった。

 抜け殻のような、人形のような西口じゃなくて、僕の知っている、気持ちがすぐ顔に出る、素直で頑張り屋さんの西口がそこにいた。

 涙が出る。

 西口は、僕の大好きな元の西口に戻ってくれたけど、もう僕の西口ではなくなった。

 涙が……出る。

 僕は二人に背を向けた。