カフェには黒豹と王子様がいます

 声が出なくなってから、家にこもりがちの西口によく会いに行くようになった。

 最初は玄関で、プリンやシュークリームを渡して帰っていたが、僕に悪いと思ったのか、部屋の中に入れてくれるようになった。

 しばらく話していると、ちょっと甘えてくる。

 自分の思いが言葉で伝えられないのが、相当ストレスなんだろう。

 僕は、西口を腕の中に抱えて、いろいろな話をする。

 たまにちょっと笑ってくれると、それだけでうれしい。


 でもなんだかたまに、この腕の中にいるのは、本当に西口なんだろうかと思うことがある。

 姿かたちは西口だけど、抜け殻のようなお人形のような、そんな感じがする。

 こんなにそばにいるのに、こうやってふれあっているのに、本当はずっと遠くにいる感じがする。


 きっとこの話をすれば、西口の感情は戻ってくるはず。

 でも怖い。