カフェには黒豹と王子様がいます

 犬のシュガーを抱えて、元子さんと動物病院まで行った。

 すぐに手術だと言われ、僕は元子さんと、病院の椅子に座った。

 見たら元子さんの手はシュガーの血だらけだった。

 元子さんを立たせて、水道まで行った。

 元子さんの手を洗ってやると、やっと口を開いた。

「ごめんね、優ちゃん。ありがとう、本当に」

「いいよ、元子さん」

 ずっと話もせず、僕は元子さんの肩を抱いていた。

 よみがえる博子さんとの思い出。

 ずっとあの中学生の時のままでいられたらよかったのに。

 好きだと言ってしまったことに後悔しかない。

 あんなことを言わなかったら、もっと普通の家族みたいに……いや、無理だったかもしれない。

 今、やっと一人の女の子がかわいいと思えるようになったから、こんなに冷静に考えることができるんだろうけど、あの時は無理だった。


 元子さんは、はっと顔をあげ、思い出したかのように、誰かにメールしていた。