「徳永くんて、いつもニコニコしてるけど、何考えてるのかわかんない」

 付き合っている子のことを本気で見ていないことはバレバレだった。


 大学に入るとき、一人暮らしをしたいといったら、オヤジと博子さんに猛反対された。

 大学は家からも近く、一人暮らしをしなくても十分通える距離だからだ。

 博子さんとオヤジの子、健は2歳になろうとしていた。

「健と優を、比べたことなんかないぞ、僕も博子も」

 オヤジはそこを一番心配していた。

「本当にそんなんじゃないから」

 オヤジも博子さんも、本当にちゃんと家族になろうとしてくれてた。できなかったのは僕の身勝手だ。

 家を出るその日、オヤジは仕事、健は保育園に行っていて、博子さんと二人きりだった。

「優ちゃん、ここはあなたの家なんだから、いつでも帰ってきてね」

「帰らないよ。もう、僕は帰ってこない」