カフェには黒豹と王子様がいます

 テーブルを片付けている時や、洗い場に入った時はすかさずメニューを見て、そこに書いてあることは全部覚えた。

「メニューに書いてあることは、お客様も読めるからねぇ」

 絶対ドSだわ、この王子様。

「マスター!この豆どんな味がするんですか?飲んでみたいです!」

「お、やる気満々だね。じゃあ、オーダーが入ったら、一口分西口さんのために残しておくよ」

「ありがとうございます!」

 そんな私の様子を見てくっくっくと笑っている徳永先輩。今に見てろ!

 それからはオーダーが入る度に、少しずつ試飲をさせてもらった。

 でも、ちょっと限界。種類が多すぎる。どんどん味がわからなくなる。

 おなかはちゃぽちゃぽ。

「コーヒー飲み過ぎると胃を壊しちゃうよ?」

 と言っている徳永先輩の笑顔が、もう笑顔に見えなくなる。

「ケーキのことも覚えて欲しいなぁ」

 鬼か!