カフェには黒豹と王子様がいます

 元子さんは、その女の人に抱き付いた。

「うん、よかったね、お姉ちゃん。……優ちゃんも、ありがとう」

 その博子と呼ばれた女の人は、徳永先輩に手を伸ばした。徳永先輩はそれを避けるように私の所に来た。

「帰ろう」

「え?でも」

「いいから。マスター、お疲れさまでした」

「優くん……」

 徳永先輩は私の腕をつかみ、ひっぱった。

 私は訳が分からないまま、徳永先輩に付いて行った。

 徳永先輩の手が痛い。

 こんな風に徳永先輩に強く捕まれたのは初めてだ。

 病院を出て、ずっと何も話さないままどんどん歩いて行く。

 歩くのが早くて付いて行くのがやっとだ。

「徳永先輩……」

 聞こえていないのか、返事をしない。