「そ!そんなことないです!ほんとに」

「じゃあいいの」

 ちょっと赤くなる徳永先輩。……あの態度は、避けてるって言うより、むしろ……。

 わ、なんだろう。もやもやする。仕事しよう、仕事!

 
 元子さんは、一番テーブルに持ってきたパソコンを置いて、原価計算をはじめた。

「えっと、あのケーキの原価がこれだから、これとこれと、このケーキをこの大きさにして……シュクレフィレ(糸飴)をつけてちょっとボリューム出すかな……ソースでデコレーションして……」

 すごい。

 ぼんやりした……もとい、おっとりしたマスターに、こんなできる奥さんがいたなんて。

 元子さんは、軽く二,三時間はパソコンと計算機をたたいていた。

 そのうちに小野田先輩がバイトに来る。

「元子さん」