「君は専務とは初対面だろ? 気難しい人だからくれぐれも粗相のないように。」


吉富さんが珍しく緊張した面持ちでいた。


こんな吉富さんの顔を見るのは初めてかもしれない。


それほど専務は神経使う人なのだろうと思った。


「吉富さん、お茶をどうぞ。そんなに面倒な方なんですか? 専務って。」


出したお茶を一口飲むと少しため息をついてから話しはじめた。



「実は、専務は女性社員を嫌っていてね。
まあ、あの容姿だ。女には不自由してないだろうが、それで困ってもいるようなんだ。」


と言うことは、専務と言うのはまだ若くて女性を惹きつける人ってことなのね。


或いは、年齢の割には若く見られることで女性が放っておかないのかも。


どちらにしてもそんな男性には勘違い男も多いから話は半分聞いておいていいのよね。


吉富さんならば、外見も中身も素敵な人だから女性は放っておかないでしょうけど。


そう言う私も吉富さんのこと考えなくはないけど・・・


でも、私を捨てたあの男・透(とおる)をまだ忘れられないのだから。困ってしまうわ。


「世の中の女性はみんな自分に気があると思っている専務なのかしら?」


そう、専務という立場を利用している男かもしれないものね。


傲慢な男の可能性は高いと思うわ。



「彼を見ればわかるよ」


「それは残念です。私は男性には興味ありませんから。」


どんな役職であっても私はそんな男はお断りだわ。