「なんで直ぐに結婚しなかったの? あれから3年も経つのに。何年も婚約を伸ばすなんて。」
「結婚に躊躇したんだよ。どうしても、出来なかったんだよ。君を忘れられなくて。」
「嘘ばっかり」
だって、あの時酷い言葉を言い放って私を捨てたのはあなたなのよ。
それなのに、芳樹がいると分かった途端にそんなセリフで私を騙そうと言うの?!
「だから、婚約破棄したんだろ。」
「この偶然がもしなかったら結婚したんでしょう?」
そう、今回偶然にも私たちは再会した。
だけど、この偶然がもしなかったら、あなたはきっと婚約者と結婚していたわ。
「それは分からない」
「どうせ、その程度なのよ。」
「3年も結婚を渋っていたんだぞ! 先方からも親父からも急かされたけど、それでも俺は結婚は出来ないと。
君の為に、俺は結婚に踏み切れなかったんだ。」
「私のせいにしないで」
今更そんな言葉を投げかけられて私が喜ぶと思っているの?
偶然に再会したことを喜ぶような私じゃないわ。
あなたが何年も探してくれたということなら信じるわ。
でも、私との再会は偶然なのよ。透が望んで会ったんじゃないのよ。
「君には分からないだろうな。俺は、君がいなくなってからどんな思いでいたのか。
これまで、どんな気持ちで過ごしてきたのか、君は知らないだろ!」
「ええ、分かるものですか。私を捨てたくせに!」
「好きで捨てたんじゃない!! 俺だって、」
「酷い仕打ちだったわよ。あんなにボロボロにされて、最低よ!最悪男なのよ!」
私の憎しみは止まらなかった。
そして、この3年間透を思い続けていた気持ちが益々膨れ上がる。
透に抱きしめられるとこの気持ちを抑えられなくなりそうで怖い。
そんな自分を透に見透かされたくない。
その気持ちだけが今の私を支えている。
なのに、透は私を抱きしめると昔のように甘いキスをしてきた。



