社長は暫く驚く透の顔を見ていた。
全く何も知らなかった透の反応を確認でもするかのように。
そして、私と透の反応を見た後にゆっくりと口を開いた。
「透、お前の息子だ。」
やっぱり、社長は知っていた!
いったい何時? どこで、芳樹の存在を知ったの?
私は混乱するばかりで言葉にならない。
それは透も同じで言葉にならないくらい驚いていた。
「そうじゃないのかね? 加奈子さん。」
ダメだしされている気分だ。
私はいったいどこで何を間違ったのだろう。
どうして、今、ここに私も芳樹もいるのだろう。
やり直せるものならば、最初からやり直したい。
この部屋に入る時に? ううん、この会社に入社する時に時間を戻したい。
なのに、
「ママ!」
不安そうな表情で立っている芳樹が可哀そうになり、芳樹のところへと駆け寄り抱きしめてあげた。
大丈夫よと、言わんばかりにしっかりと抱きしめた。
「たまたま託児所にいる君とその子を見てね。透の小さい頃にそっくりなもので驚いたよ。
君には悪いと思ったがDNA鑑定をさせてもらったよ。」
社長に私と芳樹を見られていたんだ。
やっぱりここの保育施設に預けたのが間違いだったんだ。
それにDNA鑑定されたのではもう逃げ道はない。
認めるしか・・・
「それじゃあ、その子は俺の?」
「間違いなくお前の子だ。」
これで完全に芳樹はこの人たちから逃げられなくなった。
私の子なのに、
芳樹が我が子と分かり透はどうするつもりだろう?
今は驚きで言葉にもならなくただ芳樹を見つめているだけ。
だけど、この後、いったい芳樹は私はどうなるの?



