いつかウェディングベル


良く見ると、確かに部長の前には綺麗な女の人がいた。


若くてきれいな女の人と言えば、社長室の秘書達でしょうから・・・間違いなくお迎えのようだ。


彼女は私の顔を見ると軽く会釈をした。


「田中加奈子さんですね。お迎えに来ました。これから社長室へ来てください。」


姿勢よく品のある仕草。優しい物腰で美しい人だ。私達一般の社員とは一味も二味も違う。


さすが社長室の秘書は、そこに居るだけでも華があり有能で出来る女をアピールしているようだ。


こんな女性には逆らえないというオーラが漂っている。


私は流石に息をのむと頷いて秘書の後について社長室へと向かった。


初めて足を踏み入れる社長専用のフロア。


ここには社長秘書課など社長関係の部屋があるだけで一般社員が来れる様な所ではない。


同じ廊下なのに素材が違っている。壁も照明も何もかも私達が仕事をしているフロアとは全く違う。


流石社長フロアと感心してしまうほどだ。


そんなフロアだからか一般社員である私にはそれが威圧的に感じてしまう。


心臓が爆発しそうなくらい緊張もしている。


解雇されても構わないと無謀なことをやってしまったのだろうか?と少し後悔もしていた。


こんなところに呼び出されるとは思ってもいなかったから。


「どうぞ、こちらへ。社長がお待ちです。」


そう言ってドアが開けられた。


開けられた室内の重々しい雰囲気に、益々私の心臓を早打ちさせてしまう。


案内された部屋には、社長だけでなく透の姿もあった。


これから私の戦いが始まるのだろうか?


それとも、何事もなく終わることが出来るのだろうか?


緊張で胸が張り裂けそうになる。