いつかウェディングベル


翌朝、俺は少し早めに起床すると親父達の寝室へと行きどうしても聞いてほしい話があるからと頼み込んだ。


目を覚ましたばかりの親父はまだ眠そうな顔をして時計を見ていた。


早い時間帯なのに俺がやって来たことで深刻なものだと感じたらしく寝室を出て書斎で話を聞こうと言われた。


そこで俺は加奈子に両親の事故の話しをしたと説明した。



「そうか、加奈子さんに話したか。」


「それで、今日、加奈子と芳樹を連れて病院へ行こうと思っています。」


「加奈子さんは母親を一人には出来ないだろう? しばらく母親の傍についていさせたらどうだ?」



親父の言う通り、俺も、加奈子は暫く両親の傍にいさせてやりたいと思った。


これ以上の親不孝をしたくないし加奈子にもさせたくない。



「必要ならお前も暫く加奈子さんと一緒に居てやりなさい。会社の方は私に任せればいい。」


「はい、一つ大事な商談を抱えています。実はこれです。宜しくお願いします。」


「なんだ、準備がいいんだな。最初から加奈子さんと暫く向こうに居るつもりだったんだな?」



加奈子も芳樹も一日の面会だけで終わらせるつもりは毛頭ない。


実の娘がこれまで入院中の父親に何も出来なかったのだ。おまけに母親にはすっかり苦労させてしまい人相まで変えてしまった。


その償いではないが、加奈子を両親の元へ帰すことは出来ないが傍に居てやることは出来る。



寝室へ戻ると芳樹がドアの開く音に目を覚ましてしまった。



「パパ?」


「ごめんごめん、起してしまったかな?」


「おしっこ。」


「芳樹、まだ、ここではダメだ! ほら、ちゃんと目を覚ましてトイレでするんだぞ!」



そんな事を言っても年端の行かぬ小さな子には通用しない。しかも、半分頭はまだ眠っているようだ。


芳樹を抱きかかえると急いでトイレへと連れて行った。


おしっこを済ますと目を擦り始め芳樹はいつの間にか眠ってしまった。


あどけない息子の可愛い寝顔に俺は癒されてしまう。


きっと、加奈子の両親もこうやって加奈子を慈しみ育てて来たのだろうと思った。