いつかウェディングベル


加奈子の義父が意識を取り戻したことを両親に話し、今後の生活についても一緒に考えてやりたいと親父達に相談した。


加奈子の両親だから出来るだけの面倒を見てやりたかった。


罪滅ぼしでもあるが、加奈子を産み育ててくれた親なのだから、困った時はお互い様なのだから何かしてやりたかった。


「きっと、受け入れはしないだろう。娘の嫁ぎ先に迷惑をかければ娘が肩身の狭い思いをすると思うだろう。だから、断れない程度のことを考えてやればいいんだよ。」


「どんなことをですか?」


「退院後の仕事の世話ならば受け入れて貰えるんじゃないのか?」


「それは名案ですね。でも、わが社と無関係のところでなければきっと拒まれるでしょうね。」



加奈子の両親に受け入れて貰えるかは分からないが、加奈子を安心させる為にもこの仕事の話しだけは受け入れて欲しい。


そうすれば、加奈子は安心するし義母もこれから生活の不安から逃れられる。


これまで一人で稼いで一人の給料で生きてきたのだから、これからは少しでも楽になってもらいたい。


俺の所為で苦労をかけっぱなしなんだ。その償いが出来れば俺の心も多少は落ち着く。



「そう言えば、販促課では少々揉め事でも起きたのか? 部長が私のところへ来て何やら呟いていたが。」


「ああ、きっと、吉富が加奈子にみんなの前で振られたのが原因でしょう。」


「いい加減に公表した方が良さそうだな。加奈子さんとももう一度話し合ってみなさい。」



それは十分に判っている。だけど、まだこの企画が終わらないうちは公表したくない加奈子の気持ちも理解できる。


だけど、加奈子の義父も言う様に公表する時が近づいているのは間違いないだろう。


きっと、義父も加奈子のウェディングドレス姿を見たいだろう。


そうすれば安心できるし、これからのリハビリにも希望が持てるようになるだろう。


意識が戻った今なら加奈子に両親の事を話しても良さそうな気がする。


親父はまだ待つように言ったが、俺は意識を取り戻した義父に加奈子を会せてやりたい。


だから、その日、加奈子が仕事から帰ると俺は寝室へと連れて行き加奈子に真実を話すことにした。