いつかウェディングベル


増田は慣れた手つきで加奈子にパジャマを着せると布団を掛けた。



「起きたら洗顔なさるように。このままだとお肌が荒れますからね。」



そう言って脱がせたドレスはクリーニングに出すからと畳んで抱き抱えるように持つと増田は客間から出て行った。



ベッドの横にある椅子に腰かけると俺は眠る加奈子を横目に少し考え事をしていた。



俺と加奈子は結婚したとは言え婚姻届けを提出し入籍しただけで、同居はしているものの変化のない生活をしている。



両親との同居で多少は俺の妻としての自覚が出てくるかと期待していたが、加奈子にはあまりその期待は出来そうにもない。



一旦家を出てしまえば独身時代と同じように仕事をし独身時代と同じ苗字で通している。


ましてや、本人だけでなく会社の連中誰もが加奈子は独身のシングルマザーだと思っているのだ。


そうなると、これまで同様の独身気分でいることに問題がないとなると、今回のような同伴でのパーティや宴会や諸々の出事に加奈子が順応できないままになりそうだ。



親父の言う通りにここは結婚式を挙げ加奈子にも妻として自覚して貰おう。



ただ、問題なのが加奈子の両親をどうするのか。



この企画が終わるのを待って考えようと思ったけれど、悠長に構えてなどいられないようだ。



加奈子が目を覚ましたら結婚式の事を話し合ってみよう。



加奈子のしっかり熟睡している様子に俺は一度寝室へ戻り身軽な洋服へと着替えた。



そしてお袋たちの寝室に眠っている芳樹のところへと行った。



お袋が芳樹の面倒を見てくれているお蔭で俺も加奈子も安心して仕事ができる。親との同居がこんなにも有難いと感じたのは初めての様な気がする。



「今日は助かったよ。加奈子のドレス姿も好評で皆からの視線を集めて加奈子は動揺のしっぱなしだったよ。」



「正式なお披露目の前から連れ回すのはあまり好ましくありませんよ。婚約ならまだしも加奈子さんはあなたの妻なんですよ。」


やはり、形だけでも式を挙げるべきのようだ。