それから俺と加奈子は外に待たせていた車に乗り込み会場へと向かった。
初めての夫婦同伴のパーティに加奈子だけでなく俺の心も落ち着きがなくなる。
会場へ着くまでの間、加奈子は緊張しているのか顔色が冴えなく握り締める手の平に汗をかき心臓がドキドキしているのまで伝わってくる。
早鐘でも鳴らしているのかと思うような加奈子の鼓動に、俺まで伝染してしまったのか心臓の音が良く聞こえてくる。
少しでも加奈子を落ち着かせようとしっかり手を握り締めていたが、それだけでは足りないようだった。
「加奈子、緊張し過ぎ。もう少し肩の力抜いていいよ。」
「だって、こんなドレス着て私場違いじゃない?」
「俺の妻なんだよ。君が場違いなら俺にだって場違いになる。」
「透は柿崎家の長男でしょう? 場違いなことあるものですか!」
「だったら、加奈子は俺の妻なんだ。柿崎加奈子なんだよ。」
加奈子は自分が結婚し柿崎家の一員になったことを忘れてしまったかのような困惑ぶりだった。
やはりここは早めに結婚式を挙げ、簡単で良いから披露宴をするべきだとそう感じた。
そして、今日の加奈子の緊張を解くにはこの方法が一番良いだろうな。
「加奈子、リラックスしようか?」
「え?」
加奈子の肩を抱き寄せ顎を引き寄せると甘い口づけをした。
軽く触れるだけの口づけだ。
「透、ここは車の中よ。」
「少しは落ち着いた?」
頬をピンクに染めた加奈子は愛らしくこのまま抱き締めたくなる。
この気持ちを抑えるのがどんなに難しいことか苦痛で堪らないことを加奈子は知っているのだろうか。
「少しだけ落ち着いたわ。だけど、もっと落ち着かせて。」
車の中だからと今にも拒みそうだった女が今度は俺を誘惑するつもりなのか?
だけど、せっかくのお誘いなのだ。会場へ着くまでの間、加奈子との甘い時間を楽しもう。



