いつかウェディングベル

思わず加奈子のドレス姿に見惚れているとお袋がわざとらしく咳払いをした。


すると俺は夢の中を彷徨っていた感覚から現実へと引き戻された気分になった。


加奈子の姿に一瞬我を忘れてしまいそうになった。



「さあ、加奈子さんは綺麗に仕上がりましたよ。透、お前も早く準備なさい。」



「ああ、じゃあ着替えてくるよ。」



「あ、まって、手伝うわ。」



新妻らしく寝室へ戻った俺の着替えを手伝ってくれるが、慣れない服装に加奈子は思う様な手伝いが出来ないでいた。


今日はタキシード姿で出かけるのだが、シャツ一枚にしてもどのシャツを着ていくのかさえ加奈子には知らないことばかりで手伝いにはならなく加奈子を落ち込ませるばかりだった。



「ごめんね。こんな服装したことなくて。」


「加奈子は覚えることが多くなるんだよ。服装だけじゃない、今日会う人達もそうだ。仕事関係の大切な人を紹介するから加奈子も今度はそういう付き合いがあることを忘れないで欲しいんだ。」



困惑する加奈子は頷いたものの不安そうな表情は隠せないでいた。


もう既に加奈子を悲しませているのだろうかと俺は心が痛んでしまう。


だからと俺までも不安そうな顔をいていては加奈子をもっと不安にさせてしまう。だから、「大丈夫だよ」と言わんばかりの微笑みを加奈子に向けた。


頬に触れ優しく撫でると加奈子の頬に赤味が増し瞳も先ほどまでの悩ましい瞳では無くなっていく。



「俺がついているから大丈夫だよ」



俺の言葉を聞いて少しは加奈子は安心できたようで俺に抱き着いてきた。


少し震える加奈子をしっかり抱きしめ心を落ち着かせようと思った。




「ありがとう。もう大丈夫。初めてのことでもの凄く緊張したし気が張って怖くなってしまって。」



「俺がついている。それに、何も知らなくて当然なんだ。これから少しずつ覚えていけばいいからね。」



加奈子は頷くとやっと愛らしいその顔に微笑みが戻った。


やっぱり加奈子は微笑んでいた方が可愛くて愛らしい。


そして、俺の好きな加奈子の顔なんだ。