いつかウェディングベル

それから数日後、ある程度の進行具合と中身のチェックを終えるとその日の俺の予定の販促課での仕事を終えた。


俺達に向けられる目に耐えながらの仕事は捗らない。


おまけに二人だけで仕事をしているとつい名前で呼びあいたくなる。



「なに?」


「いや、別に。今夜は慈善団体の新会長就任のお披露目を兼ねた寄附金募集のパーティーがあるんだ。今回は余興も何もなくただのパーティーだと聞いている。」


「この会社からも多大な寄附をしているのでしょう?」


「ああ、シングルマザーの生活を支えるだけでなく元夫や恋人のDVから女性を守る活動を支援している。」


「だからシングルマザーでも私はこの会社では何とかやってこれたのよね。社員の中にはシングルマザーの人はまだ何人もいるわ。彼女達が安心して働ける環境を与えたいし、子ども達にも母親との不安のない暮らしが出来るように支えてあげたいわ。」


「今回の企画が終わったら君には俺の専属秘書となって社員が働きやすい環境作りなどの仕事をしてもらいたいんだ。」


「専属秘書?」


「新たな部門を作るか現存する部門のなかでその作業をさせるのかまだ検討中でね。それが決まるまでは俺のところでやっていくつもりだ。」


そう言えば、何故か加奈子も元恋人で芳樹の父親からDVを受けていると言う噂が流れていたが、そもそもあの噂の出所は何処なのか調べたがいいのかもしれないな。


だけど、それを利用し加奈子を守る意味で会社でも遠慮なく近付くことができる。


そもそも俺の妻になったのに他人の振りをしなければならないなんて、いい加減俺は痺れを切らし始めている。


加奈子は問題が次々と解決していくと今の状況に満足しているようだか俺は不満だらけだ。


もう、俺達の関係を隠す必要はないだろうに。



商品管理部門ではこの企画に残された時間が少なくなってくると日に日に慌ただしくなるが、俺はそれだけに構っている訳にもいかない。


今夜のパーティーは同伴者が必要で加奈子には何と言って連れ出そうかと思案中だ。


妻だからと一言言えばすむ話なのに今の加奈子を見ていると言い出し難い。