いつかウェディングベル

加奈子がブチ切れるとモノに当たるという事をすっかり忘れていた。


俺達の再会時の会議で加奈子が俺にしたことを忘れていたわけではないが、つい、加奈子が可愛くてその反応を見たくて意地悪したくなっただけなのに。


加奈子は夫であり専務である俺に向かって手元にある書類をぶちまけた。




「最低!! そんなこと考えていたの?! 」


「おい、俺に向かって何投げつけてるんだよ?!」


「偉そうな態度しないでよ!」


「俺は専務なんだよ。偉そうにして何が悪い?!」


「だったらお偉い専務さんなんだから、そんなあなたに寄り添って一緒に写真写りたいって女子社員は沢山いるわよ! そんな社員とツーショット撮ればいいでしょ?!」



書類の次は何が飛んでくるかと構えていたが、今日は取り敢えずは何も飛んでは来ないようだ。


俺の構えを見た加奈子がいきなり吹き出して笑った。


以前のことを思い出したのか、あの時と状況が良く似ている。



「ごめんなさい、暴力はダメよね。」



加奈子の暴力は可愛いものさ。こんな程度の暴力だったらいつでも歓迎する。



「凶器にならないものなら大丈夫だ。」


「そ、そんなもの投げないわ。怪我をさせるなんて私には耐えられないわ。」


「それなら安心だ。君とやり合って怪我はしたくないから。」



そんなことを言うと今度は初々しい花嫁のように恥じらっていた。


加奈子が可愛くてつい手を握ってしまった。


すると、俺たちの様子を見ていた他の社員達が感嘆の声をあげた。


その声に俺も加奈子も周りを見渡しフロア皆の視線を浴びていることに気付いた。



俺たちの一挙手一投足が周りの社員には興味があるようで、俺達の僅かな動きにさえ目が光っていた。


俺が握る手に女子社員の目線が集中し、他の課の女子まで様子を見に来る始末だ。



「あの、手を・・・」


自分の妻になったのに、まだ公表していないことが理由で加奈子に近付けないのは俺としてはやり難い。