いつかウェディングベル

「透、皆に変に思われるわ。」


「思われるもなにも加奈子は専務夫人だ。気にすることじゃないよ。」



会社にいると余所余所しい態度の加奈子を少しでも解してやりたかった。


俺の前ではもう気を張らなくても良いのだと。



「まだ知られたくない?」



加奈子は頬を赤く染めて頷いた。


その姿がとても初々しくて可愛らしくて思わず抱き締めた。



「と・・・透、会社よ。」



「構わないよ。こうすると落ち着くんだ。」



「うん」



少しの間だけ二人の時間を過ごしたかった。


落ち込む加奈子の気分を少しでも和らげることが出来ればと思った。



「透、ありがとう。私なら大丈夫。吉富さんのサポートにまわるわ。」



「加奈子の企画なのにごめんな。」



「ううん」



本当ならば俺に文句の一つや二つ言いたいだろうに、俺の顔をたてて黙ってくれているんだろう。



「皆のところへ戻らなきゃ。」



「加奈子」



まだ加奈子を離したくなくて抱きしめると甘いキスを交わした。


会社の誰もいない会議室という場所が妙にそそられてしまった。


静まり返った会議室でしばらく二人だけの時間を過ごしていた。



「ねえ、透、会議室が幾つもあるのに給湯室がこのフロアに一つってのは不自由なのよね。しかも、ここって狭いでしょ?女子社員が何人も立っていられないのよね。」


「そう言えば加奈子が前にコーヒーぶちまけたとき片付けが面倒そうだったな。」


「それは忘れてもいいわ。」


「今日は何が飛んでくるかと少し期待したけど」


少し加奈子に意地悪を言いたくなってしまった。


加奈子が可愛すぎてもっと触れていたくなったから。



「加奈子、悪いが今回の企画から外れてくれないか?他にやってもらいたいことがあるんだ。その為にも、商品管理部門から別部署に異動して欲しいんだ。」


やはり今の会話を聞いて加奈子はもっと大切な部署へ異動させたくなった。