いつかウェディングベル

「君には企画を成功させる責任があるんだよ。今は女に構っている暇はないと思うが。それに、彼女は君との将来は全く考えていない。一日も早く諦めるんだな。」



何度も加奈子に拒否されながらも執拗で嫉妬深い吉富は少々平常心が欠けている。


吉富の仕事面や他の社員との関わりを見ていると優秀な部類に入る社員だが、


しかし、一旦加奈子が関わると吉富は心を乱しいつもの冷静な判断が出来ていない。


加奈子への感情は本物なのか、それとも手に入らないから欲しがっているのか、吉富の心はまだ分かりかねる。



しかし、いつまでも放置はできない。



加奈子と入籍した今となっては早く俺達の関係を公表し加奈子の生活を安心できる確かなものにしてやりたい。



「午後からは進行状況の確認をさせてもらうよ。」



「情報課からまだWebサイトの試作品が届いていませんし、」



「もう随分前から今日の事は分かっていたはずだ。女の尻を追いかけ回す暇があればもっと仕事に集中すべきだったな。」



吉富は加奈子に心を奪われ惑わされていた一人なのだろう。


加奈子、本当に君は罪作りな女だよ。



俺だけでなく吉富までも腑抜けにしてしまったんだから。



考えてみれば吉冨も俺達に振り回された犠牲者の一人なのかもしれないな。



「じゃ、午後からの会議を楽しみにしてるよ。」



静かなフロアに響く俺の足音と、反対方向へ向かう足音が聞こえる。


吉冨は自分のデスクへ戻って行ったようだった。



どんなに好いた惚れたと叫んでも任された仕事に対して無責任と思わせる結果を出してしまえば身の破滅へ繋がる。



吉冨は加奈子が1週間休んだことに気を取られすぎてしまったんだ。



俺は今日は部屋で食事を取ろう。



自分の部屋へと向かうとドアの前に加奈子の姿があった。



「と・・・・あ、専務! お話が。」


加奈子の顔色を見る限りは健康そうなピンク色で問題なさそうだ。