加奈子は往診をしてもらったが、医師の話しでは一度病院で検査を受けたほうが良いと言われてしまった。
これまで無理をしてきたこともあるが、過呼吸で倒れたり貧血で体調を崩すこともあった。
加奈子の話によると、産後から無理して生活してきたことで不正出血もあったらしくかなり体への負担も強いられてきた。
全て俺の所為だと分かるとこれ以上加奈子を苦しめられない。一人で芳樹の世話をさせられない。
「加奈子、医者の言う通りに一度検査をしてくれないか。そしてまた元の健康な体に戻そう。これまで無理し過ぎてきたんだ。これまでのことを償うためにも頼むから検査を受けてくれ。」
「でも、芳樹はどうなるの? 私の生活はどうなるの? 仕事は休めないのよ。」
「加奈子も芳樹も俺が面倒見る! 頼むからもうこんな生活は止めてくれないか?」
加奈子は素直に首を縦には振らなかった。
一緒に暮らしてもいいと頷いていたはずなのに。
いざとなると加奈子は逃げ腰になってしまう。
「これまで一人で苦しんできたんだ。その苦しみを俺にも分けてくれ。頼むから。」
俺は加奈子の手を握り締め必死に頼んだ。加奈子も芳樹も失いたくなくて。
「加奈子、頼むから。」
頑なな加奈子の心を解かすにはどうすればいいのか。加奈子を幸せにするにはどうすればいいのか。俺も一緒になって苦しめばいいのか?
加奈子が味わった苦しみを俺も味わえば加奈子は俺を許してくれるのか?
「透、泣いているの?」
「いや、悲しいだけだ。加奈子が苦しんでいるのが・・・」
いつの間にか俺の目から涙が流れていた。



