いつかウェディングベル

加奈子はこれまで仕事と子育ての両立でかなり無理をしてきたのだろう。


俺との生活のなかで、これまで張り詰めていた心が緩んでしまったのだろう。


その緩みからこれまでの疲労感が一気にあふれだしたのだと思う。


俺は仕事で数日家をあける。その間はゆっくりと体を休めて欲しい。


自宅に到着すると親父もお袋も出迎えてくれた。


孫との生活がそれほど楽しみだったとは思いもしなかった。


俺がもっとしっかりしていれば、もっと早くに孫と過ごさせる事が出来たのに。


俺は親不孝をしてきた。それに、加奈子も辛い目にあわせ俺は罪作りな事をしてきたんだ。



「あら、加奈子さんは？」


「熱があるんだ。加奈子は俺が運ぶ。お袋は芳樹を頼む。」


「可愛い子ね。透の子どもの時とそっくりだわ。」



お袋のこんな嬉しそうな顔を初めて見た。


やはり、孫がいると言うことは家の中がとても明るく感じる。



「加奈子さんはかなりお疲れの様だが大丈夫なのか？　しっかり医者には診せているのか？」



親父も加奈子の体調には気遣ってくれている。それが俺にとってどんなに有難いことか。


今、吉富がストーカー化しそうな状況の時だけに親父とお袋の理解があるのは嬉しいし助かりもする。



「加奈子さんは客間の方にベッドを用意しているわ。そこへ連れて行きなさい。この子はリビングへ連れて行くわ。」


きっとお袋は加奈子と芳樹のことを理解してくれていると思う。だから、加奈子の世話はお袋に任せればいいと思っている。



加奈子をベッドに寝かせるとお袋と一緒に芳樹と遊ぶ親父のところへと行った。


「親父、ちょっといいか？」


「あら、私には聞かせられないことなの？」


「そうじゃないけど。加奈子のことで一つ言っておきたいことがあって。」



俺が真剣な顔をしているものだから、お袋も親父も何か問題でもあるのかと心配そうな表情をしていた。