抱きしめる加奈子の体を冷たく感じるだろうと思った。寝不足なのと食事をまともに取っていないことで体が冷えていると思ったが抱きしめる加奈子は少し温かく感じた。
俺は加奈子の体温を知りたくて唇にキスした。そして加奈子の舌の熱を調べるように舌を絡めた。
「透・・・・?」
「温かい。少し熱がある。」
最近、精神的にも肉体的にも負担をかけてしまっていたはず。
そんな生活の中で小さな子を一人で育てている加奈子が丈夫な体でいるはずがない。
「俺のマンションへ行こう。ここより俺のマンションの方が設備も良い。芳樹も安心して面倒が見れる。」
「でも・・・」
「君が病欠だと分かれば、きっと、吉富はここへやって来るはずだ。これまで彼の好意に甘えて来たのだったら、きっと、これからもそのつもりで君の世話を焼きに来るはずだ。吉富に来て欲しいのか?」
「まさか」
「だったら、俺の言う通りにしてくれ。いいね?」
こんな時は有無を言わさず強引に加奈子を連れ出したほうがいい。
加奈子が俺ではなく吉富を選ぶというのなら俺もこんな強引なことはしない。だけど、加奈子は俺を受け入れてくれているんだ。
俺との将来を考えてくれている。だったら吉富は邪魔者でしかない。
「芳樹を連れて行く。荷物を教えてくれ。俺が準備するから。」
「芳樹のはここのケースの中に入っているわ。」
「加奈子はじっと座って指示を出せばいい。俺がやるから。いいね?」
「ありがとう」
やっと加奈子の顔に少しだけ笑顔が戻ってきたように感じた。
これまで俺を見ても表情が硬かった。そんな加奈子を見ても嬉しくなどなかった。
加奈子と一緒にいられる悦びを味わえなかった。
加奈子と芳樹の荷物をバッグに詰め込んでいると眠っていた芳樹が目を覚ました。
「パパ?!!」
「芳樹、おはよう。」
「パパ!」
俺がいるだけでこんなに喜んでくれる芳樹を見るとやはり俺達は一緒に暮らすのが一番だと感じた。



