加奈子の部屋の様子を見ると、まだ、芳樹は布団の中に眠っていて加奈子もまだこれから会社へ行く準備を始めるところだった。
ジャージにTシャツ姿の加奈子は洗面所へ行き、今から顔を洗い歯磨きをしている。
「適当にその辺に座ってて」
台所を見ても朝食を食べた様子はなかった。
流し台には何もなく食器乾燥機にも食器は何もなく空っぽの状態だった。
顔色の悪い加奈子を見ているとこのまま二人だけの生活はさせられなくなる。
おまけに、吉富が今後どんな手を使って加奈子の気を惹こうとするのか、それも十分に気になるところだ。
「加奈子、準備が出来たら朝食は外で何か食べよう。俺も今朝は何も食べていないんだ。昨夜も吉富のせいで食事をまともに食べていないんだ。君も昨夜は食事どころではなかったのだろう?」
加奈子はタオルで顔を拭きながら洗面所から出てきた。
その顔色は益々青白くなっていくように感じた。
「加奈子、大丈夫か? 顔色がかなり悪い。もし、気分が悪ければ今日は会社は休む方がいい。仕事は俺に任せて君はゆっくり休んで欲しい。」
「大丈夫よ。少し睡眠不足で眠いだけよ。それに、会社へ行くと芳樹を預けることが出来るからその方がいいわ。仕事を休むと吉富さんから連絡が来たり見舞いだからとやってこられても困るし。」
「吉富は部屋へ上がりこむのか?」
「最初の頃は、芳樹の荷物が多くて大変で部屋まで運んでくれることが何度かあったのよ。その時は助かっていたのだけど、今と違って遠慮はあったしある程度の距離は保ってくれていたの。だからその親切心につい甘えている私もいて・・・・・」
それは結局のところ俺が加奈子を捨てたことが原因で、吉富は加奈子に惚れていて加奈子の気を惹くためにやっていたことに過ぎない。
「すまなかった。本当に加奈子を辛い目に遭わせた。それに、芳樹にも寂しい思いをさせてしまった。本当にすまなかった。」
俺は今にも倒れそうな加奈子を抱きしめた。
そして加奈子の顔を確認するかのように指先で触れていった。
「頼むから今日は休んでくれ。」
こんな状態の加奈子を芳樹とこの部屋には置いてなどおけない。
俺は加奈子がどんなに拒もうが俺のマンションへと連れて行く。



