いつかウェディングベル

吉富が車に乗り込むと、明らかに加奈子の顔色は暗くなった。こんな吉富に怯えているのだろう。



俺もこの男が恐ろしくも感じる。



今日は吉富を刺激するのは良くないと判断した俺は、加奈子達をアパートへ送り届けるとアパートから直ぐに離れ吉富を近くの駅に下ろした。



「田中を送ってくれてありがとうございました。」



まるで自分の女のように言う吉富の考えが、手に取るように分かり恐ろしく感じると、加奈子をあのアパートで暮らさせるのは危険だと感じた。



事が起きてからは遅すぎる。加奈子が何を言おうが俺のマンションへ引っ越させる。



そして、直ぐにでも入籍し加奈子を完全に俺のモノにする。



加奈子には悪いがお前の為だ。今日、俺は決意したばかりなのだが、吉富がこれほどまでに積極的にしかも危険な行動を示してはグズグズしてはいられない。


吉富は俺が一方的な思いを寄せているのだと勘違いして、俺をけん制しようとしているだけだと思うが、そんな俺を相手に吉富は容赦なく加奈子を手に入れようと画策するはずだ。



その夜、何かあれば直ぐにでも連絡するように伝えていたが加奈子からの連絡はなかった。それは、その後何も起きなかったと言うことだろう。



しかし、俺は加奈子が無事なのか心配で、翌朝、かなり早い時間に加奈子のアパートを訪ねた。



加奈子は俺を部屋へ入れてはくれたが、あまり顔色が良くなかった。


仕事疲れが残っている上に毎日芳樹の世話をしている。そんななか昨日の吉富のような恐怖に怯えて暮らしている。きっと、夜は眠れなかったに違いない。


そんな加奈子を見ていると、また、倒れるのではないかと俺は心配で家でのんびりなど出来やしなかった。



一刻も早く加奈子の所へ安否の確認をしに行きたかった。



こんな俺を加奈子は受け入れてくれるのか不安だったが、早朝に押しかけて来た俺を追い帰すようなことはなかった。