【透★side】
きっと加奈子は俺を許そうとはしないだろう。だから、俺がプロポーズしても今更と思われてしまうんだ。それどころか、下手すれば加奈子は俺が芳樹を取り上げると誤解しているのかもしれない。
俺はもう間違ったことをしようとは思っていない。
だから、加奈子が認めてくれるまで俺は忍耐強く待つつもりだ。
加奈子が結婚しても良いと思えるまで俺は独身を貫く。
俺は間違った人生の選択をしたくないんだ。
「なあ、透。もし、本当に加奈子さんがお前を許そうとしないのなら、何故、彼女は芳樹を我々に任せるのだ? 例えどんなに仕事が忙しいからと言っても、本当に憎いお前なら我が息子を預けたりはしないだろう。」
「それはそうだけど。それは、ただ、同僚の吉富から守る為だと約束したから。」
「その約束は必ずしもお前でなくてもいいはずだ。なのに、お前を選んだ。」
「選んだのではなくて俺がそうしたいからと無理を言わせたんだ。」
親父は俺と加奈子の間にまだ愛情があると思っているのだろう。
確かに俺は加奈子への愛情を確認した。昔のまま、俺は加奈子を愛していることに気付かされた。
けれど、俺がそうだからと加奈子がそうだとは限らない。
俺のマンションで一緒に暮らした時も、俺が無理やり加奈子を抱いたようなものだ。 つい、理性が保てなくて加奈子を見れば欲しくなってしまったんだ。
加奈子が応じてくれたから俺を愛してくれているのだと思った。
けれど、現実はそう甘くなかった。
「透、女は本当に嫌いなヤツの言うことなんて信じないし、ましてや世話になどなりたくないものだ。だが、彼女はお前の世話になり少しの間ではあったが昔のような時間を過ごしたのだろう?」
親父は加奈子を知らないからそう思うんだ。
あんなに頑なになっている加奈子をどう解きほぐしたらいいのか今の俺には見当もつかない。



