いつかウェディングベル

そして、この日も遅くまで集計とアンケートの作業に追われていた。


第2会議室は遅くまで電気が点いていた。



その様子を見て透は私が今日も残業するのだと分かると、秘書に頼んで芳樹を社長室へと連れて行った。



流石に、透が直接保育施設へと出向くと社員たちの目に留まり私達の関係を疑われてしまう。



今はまだ企画で多忙なことを社員ならば誰もが理解してくれるから特に問題は起きないかもしれないが、それでも、この状態が長く続く様であればきっと誰もが芳樹と透の関係を気にし始めるだろう。



そうなった時に、芳樹と透の顔を並べて見れば二人が親子であると誰かが気づく可能性がある。



あまりにも最近の芳樹は透に似て来た。それは母親の欲目があるかもしれないが、きっと他人の目から見ても芳樹の笑った顔は透の素敵な笑顔とよく似ていると気付くだろう。



芳樹は父親似なのだ。似ていて当たり前。




これまで芳樹の面倒を良く見てくれた吉富さんがそのことに気付かない方が不思議なくらいだ。



多分、端っから私と透は面識が無くこの企画を通して初めて顔を合わせたのだと思っているのだろう。



だから、私と透をそんな目で見ていないからきっと芳樹の事も気付かないのだろう。



思ったより吉富さんが鈍感だったのが幸いしている気がする。




「専務、社長、芳樹様をお連れしました。」


「暫くは誰も取り次がないように。」


「畏まりました。」



社長が人払いすると社長室は、息子の透と孫の芳樹の三人だけになるという家族だけのプライベート空間へと変わっていた。


祖父・父親、そして芳樹の男だけの空間がどんなものか私は想像していなかった。


また、そんな時間を持っていたことも私は知らずにいた。


「透、加奈子さんに感謝すべきだろうな。こんな可愛い跡継ぎを産んでくれて。」


祖父である社長は芳樹を抱き上げるとしっかりと頬刷りをして抱きしめていた。



「だけど、加奈子が妊娠しているとは知らずに俺は彼女と別れてしまったんだ。加奈子はあの時のことを許してはくれない。」


透は拳を握ると辛そうな表情をしながら社長と芳樹に背を向けた。