いつかウェディングベル

ここ数日、透のマンションで暮らしていたことで芳樹は賑やかな時間を過ごして来た。


それも、芳樹の念願だった実の父親との暮らしをだ。


なのに、大人の勝手な事情でまた今日から芳樹には寂しい思いをさせてしまう。


残業になると、時間が許す限り保育施設で芳樹を預かってもらうことになる。


私が迎えに行くまでの間、一人寂しく待つことになる。


芳樹にはそんな生活へと逆戻りをさせてしまう。



私はなんて悪い母親なのだろうか。




「田中、どうしたんだ?」


「吉富さん、いいえ。何も。ただ、アンケートがこんなに集まるなんて思わなかったので驚いているんです。」


「専務とのツーショットにはかなりの反響があったよな。だけど、これを想定してこの企画を考え付いたんだろう?」


確かに専務人気の透にあやかってと言うのもあるけれど、あまりそこまで深読みはしていなかった。


ちょっとした復讐心から遊び心が入っているのは確かだけど。


でも、思った以上の反響があったという事は、それなりにデータが取れるはず。


そうなると、年代層における関心がどの商品にあるのか透も少しは勉強になるはず。



「いまから皆で集計作業に入るけど、第2会議室が開いているからそこを使うよ。皆に連絡を回しておいてくれないか?」


「分かりました。」


吉富さんも企画担当者として今回の企画への理解がある。


吉富さんは仕事面に於いては文句のつけようがない素晴らしいパートナーになると思う。


だけど、


私生活面に於いてはあまり深く付き合いたいとは思えない人になっている。


それどころか吉富さんの私を見る目が怖く感じる。



今朝から私を見つめるその瞳には何か冷たいものを感じてしまう。


これは私の気のせいなのだろうか。