いつかウェディングベル


「俺が説得すると言ったら? もし、親父を説得して加奈子との結婚を許してもらえたら俺と一緒になってくれるか?」



そんなの無理に決まっている。絶対に会社に何の利益にもならない一般家庭の娘との結婚を許すはずないわ。



それが証拠に、芳樹の存在を知ったからって私達の将来について何も話を進めないじゃない?



もうあれからどれだけ日が過ぎたと思うの?



なのに、社長は芳樹が柿崎家の子どもだからと何も話し合いの場を設けようって連絡すらしないのよ。



結局、この子は透の子であってもあの家とは関係ないって言いたいのよ。



それに、あの時、透に無慈悲にも捨てられた時の辛さを忘れられないでいる。



だから、透への気持ちが残っていても信じられなくて怖くて私はどうしていいのか分からなくなる。



どうしても迷いがなくならないのよ。



「ごめんなさい。今はアパートへ帰して。吉富さんのことは注意するしハッキリと断るわ。だから、芳樹と私はアパートへ戻るわ。」



「決意は固いのか?」



「ええ」



今はアパートへ戻って冷静になりたい。



ここにいると、透への気持ちばかりが増してきてあの辛かった日々が遠い昔の様に感じてしまう。



今は、元の生活に戻って私は自分の心を見つめ直す必要があると感じるの。



「分かった。但し、家と会社の往復は俺の車で移動すること。いいね?」



「ダメよ。そんなことをしたら目立ってしまうわ。噂になってしまったらどうするの?」



「俺は気にしないよ。芳樹の父親は俺だと言いたいくらいだ。だけど、加奈子の許しもなくそうするつもりはないよ。
だから、俺も吉富君と同じ加奈子に片思い中の男になるよ。」



透は本気でそんなことを言っているの?


自分の息子なのに吉富さんと同じ立場に立とうと言うの?


本当にそんなことが出来ると思うの?!