「このままアパートへ帰れば吉富が待っているぞ。それでも帰るのか?」
それどういうこと?
吉富さんはいったい透に何を話したの?!
「吉富はお前を離すつもりはない。そして、お前のアパートも知っているし、芳樹のことも知っている。
俺から全てを奪い取る気でいるんだよ、アイツは。」
透が興奮すると私の事を「お前」と呼ぶ。 そして言葉も荒くなる。
きっと、吉富さんが透の気に障るようなことを何か言ったから、透は吉富さんに敵意を剥きだしにしているんだ。
「どんなに吉富さんが求めても、私は吉富さんとは一緒にならないし、一緒に暮らすこともしないわ。
これまでは、確かに吉富さんを頼っている私がいたけれど、もう誤解されるようなことはしないつもりよ。」
だから、吉富さんともお付き合いする気はないのよ。
透も同じことよ。
「だから、このまま私をアパートへ帰して。」
「芳樹は俺の息子だ。俺が育てる。」
「そんな!! あの子は私が命がけで産んだ子よ! 私の子よ!」
「だったらここにいればいい!! ここで一緒に暮らそう。」
透は親権を持ち出して私を繋ぎとめようとしている。
私だって透とは離れたくないわよ。
そう思ってしまうわよ。
だけど、
「それで? また縁談が持ちあがったらまた私は捨てられるの? 今度は、芳樹がいるから慰謝料をたっぷり上乗せして私をここから追い出すんでしょう?」
「そんなことはしない」
「されたわ!! 私はあなたに捨てられて、どんなに辛い思いしたか分かる? また、私に同じことをしようとするの?」
私だって透と一緒にいたいわよ。ずっとここで暮らしていきたいって思うわよ。
だけど、同じことの繰り返しは嫌なの。



