吉富さんの優しさは最初は嬉しかった。
私と芳樹を気遣ってくれるのは、男性の優しさだと感じてそれを受け入れている自分がいた。
だけど、私はただ吉富さんを利用していただけで彼と一緒になろうとか過ごそうとか考えたことはない。
ただの会社の仲の良い先輩という言持ちで甘えていたのだと思う。
私はそう思っていても肝心の吉富さんには私の気持ちは伝わっていない。
それどころか、私を心配しているという吉富さんの行動が少しずつエスカレートしているようで怖い。
このままだと私も透も吉富さんにとっても良くないことが起きそうだ。
「吉富君にまたプロポーズされたんだろ?」
「え?」
「宣戦布告されたよ。『専務にもDV男にも負けるつもりはありません』ってハッキリ言われたよ。俺はいもしないDV男と吉富君とで君を争うつもりはないんだけどね。」
吉富さんってば、いったい何を考えて透にそんなことを宣言したのよ?!
まさか、自分が上手くいくとでも思ったのかしら?
だとすれば、悠長に考えている暇はないのだけれど・・・・
「透はなんて言い返したの?」
「いや、下手に言えば後々面倒だから無視したよ。」
結局、透は吉富さんも相手にしていなかったのね。
「加奈子、もうあのアパートは引き払ってここへ越さないか? 加奈子だってもう十分に分かっているだろ?
俺も、加奈子も別れるなんて出来ないんだよ。この先何があっても俺たちは一緒にいなきゃいけないんだよ。」
「またその話? だったらもう話し合うことは何もないわ。私、今夜は芳樹と一緒に寝るから。」
「ダメだ!!」
「透、私たちは一緒にはなれないのよ。」
透は私の腕を掴んだがその手は緩み私の腕を解放した。
私も一緒に居たいという思いが強いけれど、このまま流されて透と一緒にベッドには入れない。
もう、別れなきゃいけないのだから。
これ以上、透の温もりを感じたら私は別れられなくなる。
もうこれ以上苦しい思いはしたくないから。



