いつかウェディングベル


芳樹が眠ったばかりだからと別室で話をしたいとなり、私たちは寝室へと行くことにした。


私はベッドに腰かけると透の動きに敏感になった。


透はベッド横の椅子に座り私とは向かい合わせになるように座った。


こんな風に意識して座ったことはないから少し緊張してしまう。


「気分が悪いのかい? もし、そうならまた明日にでも話そう。」


「大丈夫よ。少し緊張しているだけ。」



私がどんな話し合いになるのか不安になっていると思ったのか、透は優しい眼差しで私を見つめていた。



だけど、話を始める時は真剣な表情へと変わっていく


「昼間、吉富君から電話をもらったんだよ。」


「私にもあったわ。」


「彼は君が芳樹の父親に無理やり連れ去らわれたように言うんだよ。確かに、俺は無理やり君をここへ連れ込んだかもしれないし、療養の為にって嫌がる君をここに止めている。」



でも、それは私も納得の上だし、今の企画をやっている間は私も助かるからと承知の上でここにお世話になっている。


だから、無理やりというのはかなり語弊がある気がする。


「俺が無理やりと思われるのは仕方のない事だと思うよ。だけど、芳樹の父親は元DV男だから暴力を振るわれていないか心配だと言い出したんだ。俺は、自分が情けなくなるよ。」


私もまさかそこまで話が飛躍するとは思っていなかった。


だから、透のDV男という噂は何とかしたい。


でも広がった噂というものを鎮めるのにはかなりの時間と労力が必要になりそうな感じがしてならない。


「兎に角、俺は大丈夫だから安心するようにしか言えなかったよ。 今の状態で吉富君に事実を言うのはどうかと悩んでしまってね。加奈子に迷惑をかけるんじゃないかと思って。」


透も悩んでくれたのだ。下手な喋りで私に迷惑をかけることをしないように。


だけど、それで吉富さんは納得したのだろうか?


「安心して」なんて言葉ほど頼りないものは無いのだから。