「ママ! ほら!ジュースだよ。」
リビングの方から元気良く戻って来た芳樹。
「ありがとう!ママ、飲んでも良い?」
「うん!いいよ!」
天使のような可愛い息子だ。
こんな子には悲しい思いをさせたくないのに。
自分にはパパがいると分かってからの芳樹を見ていると毎日が楽しそうに暮らしている。
そんな芳樹から父親を取り上げるようなことをしてもいいのか悩んでしまう。
このまま透と別れ芳樹と元の生活に戻る時、芳樹はどんな顔をするのだろうか。
私は、もしかしたら芳樹に残酷な事をしているのでは?
「加奈子、芳樹が起きている間は何もなかったようにして欲しい。後で、ゆっくり話し合おう。」
「分かったわ。」
芳樹のことを考えるとそう答えるしかなかった。
しかし、吉富さんが何と言って透に連絡を入れたのかが気になっている。
芳樹の前では出来るだけ明るい私でいようと思ったのに、どうしても私は吉富さんの姿が頭に浮かんでしまう。
「加奈子、アイツのことを考えているのか?」
「そうじゃないけれど」
「他の男のことなんて考えるな。俺のことだけを考えてくれ。」
そんなに都合の良いようには出来ないわ。
でも、芳樹の前だからか、にっこりと爽やかな笑顔でそう言われるとそんな気にもなってくる。
「芳樹、パパのグラタンはどうだ? 美味しいか?」
「うん!ママとおなじだよ。おいしい!」
「そりゃあ同じホワイトソース使っているからなぁ。これで同じ味が出なかったら恐怖ものだよ。」
「パパ、頑張って作ってくれたよね。ありがとう。」
「どういたしまして。」
「パパ、ありがと!」



