「美味しそうなチーズの匂いだわ」
食べ物の匂いにつられて目を覚ました私。
まるで食事に飢えていたような目覚め方だ。
それもそのはず、時計を見てみると私は随分と眠っていたようだ。
それに、心地よい眠りについたと思ったら、リビングのソファーに眠っていたはずなのに、いつの間にか寝室のベッドに眠っていた。
きっと、透が私をここまで運んできてくれたんだわ。
ベッドに横になり少し考えた。
吉富さんをこのまま誤解されたまま放置するのは良くないことで、透との関係もいずれ芳樹を通して職場の皆に知られてしまうだろう。
ならば、この際、私と透の関係を打ち明けてはどうだろうかと。
私は自分のことだけを考えるとこんな結果を出してしまう。
だけど、
透は私が思っているような軽い気持ちで皆に打ち明けることは出来ないだろう。
万が一、この先、透に相応しい女性と結婚する場合、私も芳樹も透の結婚には邪魔な存在となる。
そうなると、せっかくの縁談を私と芳樹で壊してしまう可能性がある。
ああ、
そう考えると、私の様に気楽な考えで私たちの関係を公には出来ない。
やっぱり、吉富さんには事実は打ち明けられない。
ひたすら吉富さんからの求婚を断るしかない。
だけど、このままここに居たのではいずれ吉富さんにもここを知られてしまいそうだ。
この場所だけでなく、きっと、透との関係にも勘付くだろう。
吉富さんとはそんな人だ。
ならば、早いうちにやっぱりここを出た方が良い。
透の優しさに甘えたくてここに居たいという気持ちがこれ以上強まる前に、私は芳樹を連れてここから出ていかなければならない。
芳樹には可哀想な事をするけれど、いつかはここを出て行くのだし、いつかはまた母子だけの生活に戻らなければならないのだから。
忘れてはいけない。
私は透とはつり合いの取れない女だという事を忘れてはいけないのだから。



