透に仕返しをしたかったワケではないけれど、少しでも私のこれまでの痛みを分かって欲しいとこんな幼稚なことをしてしまったと思っている。


こんなことで、私の痛みが分かるはずはないのだけど・・・


透から苦情なり何か反応があるかと多少は心配していたが、透はその後も私の顔を見ても何も言わなかった。


ただただ呆れていると言わんばかりの顔はされてしまったが・・・


それどころか、全国にある支店を巻き込んでしまったことで毎日が忙しくなり定時で帰宅できる状態になかった。


そんな私の代わりに透が芳樹の面倒を見てくれたのがとても有難く嬉しかった。


透は保育施設へ芳樹を迎えに行くと透のマンションへと向かう。


これまで出来なかった父子の触れ合いには十分な時間だ。


それに、私がいないことで純粋に父親と息子の時間が持てる。


貴重な時間だと私も透も思っている。


だから、透が芳樹と過ごすことに反対はしない。


それどころか私が仕事に集中する為には、言葉は悪いが透を利用した方が助かる。




本当は直ぐにでも自分のアパートへ帰るつもりだった。


だけど、毎日の仕事を考えると透の好意に甘えていれば私は安心して仕事に集中できるのだから、


ズルい考えかも知れないが、どうしても、この仕事を成功させたいから今は透のそばにいる。



こんなの単なる言い訳に過ぎないのだけど。


いつまで、こんな言い訳を自分に言い聞かせるつもりなのだろう?


心の奥底では透とは離れたくないと思っているのに。



こんな自分が好きになれそうにない。