体育館からは盛り上がる歓声が聞こえてきていた。今まさに後夜祭が始まっているのだ。

 扉の前に辿り着き、走って荒れた息を整える。どくどくと全身に鼓動の打ち付ける音が響いている。

「璃子、緊張しすぎ。ほら、笑って?」

「ほんとだ。璃子は今、シンデレラなんだよ!ムスっとしてたら可愛くなった魔法が解けちゃうじゃん」

 バシッと背中を彩音に叩かれて、前につんのめる。

「王子を皆から奪い去っちゃうくらいの気持ちで頑張れ」

「う、うん!」

 緊張して固くなりながら、ガッツポーズを上げた。

 彩音とユイちゃんは目で合図するように見合って、二人で扉を開ける。

 その先では鳴り響く音楽と、歓声と、照らされた舞台……と、その上に立つ彼を、離れていてもすぐに見つけた。

 私の足は一歩、また一歩と進む。周りの音なんか聞こえなくなるほど、彼から目が離せなくなって、心の中で「気づいて」と願う。

 私を、見て。

 大好きな、あなたの目を私に向けて。

  洸君、こんな私に笑いかけてくれたあの日から、ずっと、ずっと……