隣の席の先輩に言いたいことも言えない私はチキンだろうか。

片瀬さんに言ったら、

「お前はチキンじゃなくてピッグだな。」

とか言われそう。
ただの妄想なんだけど、絶対に言いそう。

片瀬さんとそんなやり取りをしていると、

「今泉さん、ちょっと良い?」

いつの間に自分の席に戻っている上条課長
に声を掛けられた。

一気に心拍数が上がる。

うわぁ〜、どうしようっ。
仕事で呼ばれてるだけなのに緊張する。
ダメだ、普通、普通にしなくちゃ。
普通ってどうやるんだっけ⁈

そんな事を考えながら、精一杯の普通を装って課長の席に向かう。

「おはようございます、上条課長。」

「あぁ、おはよう。今日の10時からの会議、参加人数が増える事になったんだ。申し訳ないんだが、第一会議室に用意してある資料やプロジェクターを第三会議室に移動してもらえるかな?」

「はい、わかりました。直ぐに移動しておきます。」

「宜しく頼むよ。」

良かった、普通に話せた!
変な態度にはならずに、いつも通りの部下だったはず。

でも、やっぱり上条課長は大人だなぁ。
私みたいにドキドキ緊張するとか見た感じ全然無さそうだもんね。

あまりの普通な感じに、本気で夢オチなんじゃって思えてくるなぁ…。

ダメダメ、仕事しなくちゃだわ。