あの日、別れようって決めたのに、千織さんは汗だくになりながらも、わたしに会いに来てくれた。


汗だくの千織さんは、お母さんが言うようにレアすぎて、つい見入ってしまった。


あの時、お父さんは反対した。最終的には許してもらったけど。


でも、今でも〝気に入らない〟と、言っている。


お母さん曰く〝どんな男(ひと)が来ても気に入らない〟んだそう。そういうものなのかな。


理由を聞かれた時は、ものすごく焦った。


だって〝キスしてくれないから〟なんて、言えるワケがないものっ…。


だからって、お母さんに言ってもらった、わたしもわたしだけど…。


だけど〝キスしたかったの?〟って、聞いてきた時の千織さんっ。


ヤバかったなぁ……カッコよすぎて、ドキドキがとてつもなく早くなった気がした。