愛ニ狂ッタ人









先輩を、目は見つめたまま。

左手は、先輩の胸ぐらを掴んだまま。

右手は、ティーカップの置かれたテーブルを、静かに這った。





そしてテーブルの上に置かれていたアレを掴み。

静かに、作業した。





作業を終え、私は胸ぐらから手を離した。

そして、溜息をついた。

目の前で震える滝田先輩は、私に何をされるのか恐怖でいっぱいで、私の作業のことなんて知らない。

私は心の中でほくそ笑んでから、笑顔を先輩へ向けた。






「私、彼の彼女なんです。
だから、彼に勝手に接触したアナタが許せなくて。
突然、申し訳ありません」





謝る気なんてなかったけど、計画のうちなので、謝っておく。

彼女は浮かべていた恐怖心が冷めていくのを、感じたはずだろう。

何かされそうだったのに、簡単に謝られたのだ。

感じるのも…無理はない。






「私、そろそろおいとましますね。
あ、その前に紅茶飲んで行こうっと」

「え?」

「確かに、私はこの紅茶、ハッキリ言って好みじゃないです。
だけど、やっぱり飲んでおこうかなって」





彼女は

「ああ……」

と気の抜けたような返事をし、自分のティーカップに手を伸ばし、ゆっくり口元に持って行った。