愛ニ狂ッタ人







ゆっくりとカップに口をつける。

そこで、口内に貯めておいた唾を、飲み込む。

ごくん、と唾を飲む音がした。





「…美味しいです」

「良かったわ」





本当は、飲んでいない。

唾を飲んだだけ。

だけどそんなことは知らない滝田先輩は、私が紅茶を飲んだと思うだろう。

安心した様に笑う姿が、可笑しかった。






「でも、ごめんなさい。
私の口には…合わないみたいです。
折角淹れてくれたのに…ごめんなさい」





カップをソーサーに戻し、私は頭を下げる。

小さく、彼女の舌打ちが聞こえた気がした。

顔を上げると、そんなことが気のせいだと思えるほど、彼女は笑っていた。






「そうなの。
じゃあ、しょうがないわね。
確かに、誰にでも好き嫌いはあるわよね」

「はい。
…彼が誰にでも人気なのを、アナタが嫉妬するように。
好き嫌いは、誰にでも存在しますヨネ?」






彼のことを言ってみると、先輩は笑顔を消した。

それに比べ、私は笑っていた。