愛ニ狂ッタ人









「…お飲みにならないの?」




私がお礼を言ったのに、手にさえ持とうとしないから、彼女が聞いてきた。





「私、紅茶はあんまり好きじゃないんです」

「美味しいわよ。
この紅茶を嫌いだと言う人に、会ったことないわ」

「たまたまじゃないですか?」

「騙されたと思って、飲んでみなさいよ」





何故か少し、私に彼女は必死そうに見えた。

どうしてそんなに、飲ませようとするのか。

それが例え本心でも、その必死そうに見える姿からは、嫌なことしか浮かばなかった。





彼女が私を殺そうとする、その動機はわかる。

私が、滝田先輩が妹の復讐のため、彼の靴を真っ赤に染めたのを知っているからだ。

簡単に言えば、口止めのために私を殺そうとしているのが、動機だろう。

彼女が私へ殺意を持っていれば、の話だけど。





「……いただきます」




彼女は必死だ。

私に紅茶を、何が何でも飲ませようとしている。

このまま拒んでも良いんだろうけど、下手したら彼女は逆ギレする。

紅茶を顔にかけられ、1滴でも口に入って、中に毒がはいっていたら。




私は内心溜息をつき、ティーカップを両手で持った。