「……ありがとう、雪愛」
僕へ話しかけてきた虫は、泣きながら消え。
僕は再び、雪愛の隣へ腰かけた。
「どうして、お礼なんて言うの?」
「当たり前じゃないか」
だって、雪愛を抱きしめた時、知ったんだ。
彼女が、微かにだけど、震えていたことを。
彼女は、人一倍怖がりだ。
コミュニケーション能力も、多分人と比べて低いだろう。
そんな雪愛が、僕のために、あの虫に抗議してくれたんだ。
…これほど嬉しいこと、ないじゃないか。
「だって、キミが取られるの嫌だったんだもの。
キミは私のモノ…でしょう?」
「当たり前じゃないか。
僕は雪愛以外を愛さないし、愛せない。
雪愛以外欲しくないし、必要ない」
僕の夢。
それは、
この世界中に、
雪愛以外の人間がいなくなること。
―――雪愛と僕だけの世界を作ること。


