愛ニ狂ッタ人







先生たちだって、彼が被害に合えば困るはずだ。

学校の実質的持ち主は彼だし―――正確に言えば彼の家だけれども―――、彼の両親が学校へ寄付するお金は、私の家とは天と地ほどの差があるみたいだし。

学校維持のためになくてはならない存在である彼がもし、いじめを理由に退学でもしたらどうなるのだろうか?

困るのは、先生たちのはずなのに。







まぁ、今怒りを向けるべき相手は先生ではない。

怒りをぶつけなくてはいけない相手は、彼の上履きをペンキで真っ赤に染めた、誰かだ。

彼への悪意を持っていなければ、こんなこと出来ない。

彼は誰にでも好かれる人気者だから、絞り込むのは簡単なはず。






「取り敢えず、気にせず授業を受けてください。
私の上履き、貸しますから」

「ありがとう、雪愛ちゃん」





彼はにっこり笑ったけど、どこか哀しげな感じがした。

彼はきっと、今までも人気だったはずだから。

初めての経験に、慣れていないのだろう。

私は以前もこういういじめは何度も経験しているので、慣れているが。






幸い私の持つ上履きは彼のサイズに合っていて、彼はそれを履いて授業を受けることとなった。

私の上履きは隠されていたけど、予想済みだったので、もう1つ持ってきていた代えを使って授業に出席した。





彼を、哀しげな雰囲気にした、誰か。

私をいじめるのは構わない。

だけど、彼に手を出すなんて、許せない。





許セナイ、ヨ―――……。