愛ニ狂ッタ人







普段私から話しかけることなんて、当時は滅多になかったけど。

いつも笑顔を絶やさない彼が、無表情なのが気になって。

私は自分で気が付いた時には話しかけていた。






『どうしたの?』

『雪愛ちゃん!?』





彼は見るからに慌てた様子で、私の視界から自分の下駄箱を隠すように立ちはだかった。

だけど、時すでに遅し。

私は彼の下駄箱に施された、悪意にしか感じられないモノを見てしまったのだ。






今はその出来事があってから、下駄箱は廃止されたけど。

当時はまだあって、中には上履きがはいっていた。

蓋はあるものの、誰でも簡単に開けられるようなチャチなもの。

その上蓋には名前が書かれているから、どこが誰の下駄箱だかわかってしまうのだ。






彼の、いつも丁寧に保管されていた上履きには。

…真っ赤な液体が塗られていた。

例えるならそう…血のように真っ赤な、液体が。

血の独特な血の匂いはしないから、血ではないとわかるけど。

初めて見た人には、血が塗られていると勘違いするだろう。

事実、初めて見た私も最初は血だと思った。






学校指定の、真っ白な上履きにかかる、真っ赤な液体。

血にも見えるそれは、彼の輝く笑顔を、消してしまったのだ。