愛ニ狂ッタ人








「…あ、あの……」






彼女の話だけに耳を傾けていると。

異音が僕の耳へ届いた。

僕は彼女を見て笑っていた顔を消し、声の主へと首を動かした。






「……何?」

「そ、そこ…アタシの席なんだけど…」

「……だから、何?」

「ど、どいてくれない…?」





大げさに溜息をつくと、彼女がガタッと勢いよく立ち上がった。

僕も反射的に立ち上がった。






「ゆ、雪愛……?」





彼女は僕の前に立つと、話しかけてきた女へ殺気を向けた。

…その瞳さえも美しい。

僕は彼女の美しさに、思わず眩暈を覚えた。





彼女は可愛くもあり、時に美しい。

心をポキッと折ってしまいたい。

その心を、僕へ染めてあげたい。

だけど同時に、

その心を他の虫に折られないよう、

僕が全力で守っていきたい……。