「何雪愛のお母さんが大事に育てた花をむしってんだよ。
雪愛のお母さんが、雪愛よりも大事に育てた花をよ……」
あの家は、本当に哀しい家だ。
同時に、勿体ない家だとも思う。
あんなに可憐で美しい雪愛を、愛さないなんて。
僕らの頭上に輝く満月よりも美しい、雪愛を。
「その上さぁ……」
僕はゆっくり園田愛恵へと近づき、その胸ぐらを掴んでやった。
涙を流し始めた彼女へ向け、僕はにっこり微笑んだ。
「お兄さんに振り向いてもらえないからって、雪愛をいじめる計画立てているのも止めなよ。
僕が知らないとでも思ったの?」
「な、何でアンタが、そのことを…」
「僕は雪愛を愛しているんだよ?
雪愛に害のある人を徹底的に調べるのは、当たり前だよね?」
キミのこと、僕は何でも知っているよ。
「園田愛恵、××年5月4日生まれのA型。
両親はキミが6歳の頃に離婚し、2つ上の姉は父親に引き取られ、キミは母親へ引き取られた。
両親は駆け落ち同様に結婚したから、祖父母とは1回も会ったことない。
親戚とも会っていないし、イトコは存在しない。
月曜日は家へ真っ直ぐ帰らずに塾へ行き、その後愛しのお兄さんの家へお邪魔し、頼んでもないのに勝手に手料理を振舞う。
火曜日は小学2年生から習っているピアノ教室へ行き、お兄さんの大好きな曲をひたすら弾いて、お兄さんの家で手料理を振舞う。
水曜日は家へ帰らず真っ直ぐお兄さんの家へ行き、お兄さんに勉強を教えてもらい、手料理を振る舞い、お兄さんの部屋に泊まる。
木曜日は月曜日と同じ塾に行き、お兄さんの家の前で1時間ほど突っ立ってから、家へ帰り、カップラーメンなど手軽に作れるものを食べる。
金曜日は水曜日同様に過ごし、お兄さんの家に泊まる。
土曜日は塾でのテストの日だから、午前中にお兄さんの家に行って勉強を教えてもらい、必ず100点を取ると言って有言実行し、手料理を振舞う。
日曜日は何も用事がないクセにお兄さんの家へ行き、もしお兄さんが遊びに行くものならついていく。
…どう?」


