愛ニ狂ッタ人








僕は屋上へ向かう前に用意しておいた缶を渡す。





「はい。
愛恵って確か、グレープフルーツジュース好きだよね?」





渡したのは、グレープフルーツが描かれた缶。

プルタブはしっかり閉まっている。





「どうしてわたしのこと…」

「言っただろ?
俺、愛恵のこと好きだって」

「嬉しい…いただきます」





プシュッと良い音をたてながら、プルタブを開ける馬鹿女。

笑いたい気持ちを必死に我慢し、僕も同じパッケージの缶を開けた。





「…へぇ、何も細工していないのね」

「……愛恵?」

「気安く呼ばないで、王子サマ。
まさか、本当に好きになるとでも思った?
王子って、単純なのね」





フフッと笑う園田愛恵。

僕もふっと笑った。





「演技だったってわけ、か」

「当たり前でしょ。
わたしはそう簡単に人を好きにならないわ」