愛ニ狂ッタ人









「ここは、稲生の家なの…?」

「そうだよ。
ユキちゃん、テキトーに座ってて。
お茶でも淹れるから」





お茶。

ふと、滝田愛佳を思い出した。

あの時アイツは、私へ紅茶を淹れた。

毒物のはいった、紅茶を。





「はい、緑茶で良いかな?」

「…ごめんなさい。
私、お茶は基本好きじゃないんです」

「ジュースの方が良い?」

「…飲み物は、基本飲みません」

「脱水症状になっちゃうよ?」

「大丈夫です」





彼はいつも、私へ甘いココアを淹れてくれる。

それしか、私は飲まなくなっていた。

彼が淹れてくれるのは、全て安全だから。






「…ユキちゃん、手を出して?」





私は特に疑いもせず、両手を出した。










不気味なくらい、にっこり微笑む、稲生を疑わずに。