愛ニ狂ッタ人









最初は勿論、監禁なんてしていなかった。





結婚当初や、僕が生まれてからの少しの間は、2人は普通に生活していた。

ただ、周りの夫婦より仲が良いなと思うぐらい。

母が実家である、この家の社長を務め。

父が、この家のグループ会社の社長をしている。

気も合って、良いパートナーだと周りからは絶賛された。






だけど、そんな“良いパートナー”は、ずっと続かなかった。

母が突然、父をグループ会社の社長の座を取り上げたのだ。

そして父は、世間から行方をくらました。





母は色々な人から、父のことについて尋ねられていた。





「夫は、婿養子だと言う立場で、精一杯頑張っておりました。
ですが、やはりこの家の重圧に耐えきれず、精神を病んでしまったのです。
そのためわたくしは、夫を社長の座からおろしました。

夫は、元気です。
皆さん、ご心配をおかけして、申し訳ありません。
ですが、わたくしがこれからも、夫を支えて参ります」






そう涙交じりに話し、母はマスコミに綺麗なお辞儀を見せていた。

マスコミは、このことを大きく取り上げた。




病んでしまった旦那を支える、献身的な良き妻。

普通なら離婚してしまいそうな所を、支えてやると言った、女神のような奥様。

憧れの妻ナンバーワンに輝いた名家の妻!



毎日のように、母のことは、良く書かれた。





…そう。

良く書かれた。






僕はこの時に悟った。






―――ああ。

マスコミって、単純なんだなって。