愛ニ狂ッタ人








痛みを覚えながら目を開けると。

拳を構えている、お父様の姿が目に入った。






僕は急いで、右へ避ける。

拳が壁へ当たる音が響く。

お父様は痛みなんて気にしないように、僕へ視線を戻した。

殺気の溢れ出す、憎しみしか宿していない瞳だった。






僕の体は、金縛りにあったように、動かなかった。

頭では動けと命令しているのに。

心がお父様の殺気に怯えている。






殴られる。

そう覚悟した時だった。






「……何しているの、かしら?」

「……ッ!?」




地下室へ響いた声に、僕とお父様は同時に反応した。





「…あなたは部屋に行きなさい」

「……は、はい…」





震える体に喝をいれ、僕はふらふらと立ちあがり、地下室を出た。